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B1最高勝率の指揮官が静岡へ ジョン・パトリックHCはどんな指導者なのか

ホーム開幕戦のベンチサイドで、速攻に出る選手たちを見つめるヘッドコーチの姿。

2026年9月26日、このはなアリーナ。ベルテックス静岡のホーム開幕戦のベンチには、B1リーグで歴代最高勝率を記録した指揮官が座る。ジョン・パトリック氏、58歳。

クラブは2026年5月4日、パトリック氏と2026-27シーズンのヘッドコーチ契約を締結したと発表しました。前年度まで千葉ジェッツや海外リーグで指揮を執ってきた人物が、なぜ静岡なのか。そして、どんなバスケットボールを持ち込もうとしているのか。

この記事では、公式に確認できた経歴と本人の言葉から、その一点に答えます。

ここがポイント: パトリックHCが静岡で掲げているのは「ファストペースのバスケット」と「毎日同じ熱量で練習する」という日常の基準づくりです。

この記事で分かること

  • ジョン・パトリック氏の経歴と、ベルテックス静岡が就任を発表した日付・内容
  • 千葉ジェッツ時代に残した数字が何を意味するのか
  • 本人が語っているバスケットボール観と、チームカルチャーへの考え方
  • 2026-27シーズンの静岡が置かれた状況と、現時点で確定していない論点

目次

クラブが発表した事実を先に整理する

まず、公式に確認できている枠組みを固めます。

ベルテックス静岡は2026年5月4日、ジョン・パトリック氏がりそなグループB.LEAGUE 2026-27シーズンのヘッドコーチとして加入することを発表しました。クラブのリリースによれば、パトリック氏は1968年2月29日生まれのアメリカ出身、スタンフォード大学の出身です。

同じリリースには、日本・ドイツ・台湾にまたがる指導歴が記載されており、主な期間を抜粋すると次の通りです。

年所属・役職
1999-2002年JBLスーパーリーグ ボッシュブルーウィンズ ヘッドコーチ
2005-2006年JBLスーパーリーグ トヨタ自動車アルバルク ヘッドコーチ
2013-2022年BBL MHP Riesen Ludwigsburg ヘッドコーチ
2022-2024年千葉ジェッツ ヘッドコーチ
2025-2026年TPBL 新北キングス ヘッドコーチ

日本での指揮は1999年に始まり、ドイツのブンデスリーガで複数シーズンを過ごし、千葉ジェッツを指揮した後、クラブのリリースによれば2024-25シーズンに再びBBL Ludwigsburgの指揮を執り、2025-26シーズンは台湾のTPBL新北キングスを率いてから静岡に来た、という経歴です。20年以上にわたって日本のバスケットボールと接点を持ち続けてきた指導者でもあります。

クラブのリリースには、本人とクラブ側のコメントも掲載されています。パトリック氏は「静岡でみなさんと一緒に、新しく強いバスケットボールチームを築き上げるという挑戦を楽しみにしています」とコメントしました。GMの井上雅史氏はパトリック氏の理念や情熱とクラブの方向性に高い親和性を感じたと述べ、代表取締役社長の松永康太氏は「勝利に対する明確な基準と、チームづくりにおける強い哲学を兼ね備えた指導者」と評しています。

B.LEAGUE公式サイトも同日、この契約を伝える記事を掲載し、クラブが2030年の新アリーナ誕生を見据えて強化を進めている文脈の中に、この人事を位置づけています。

千葉ジェッツで残した数字は、何がすごかったのか

結論から言えば、パトリック氏の評価を決定づけたのは「勝った」ことではなく「勝ち続けた」ことです。

バスケットボールキングは2026年5月4日、パトリック氏の就任を伝える記事で、千葉ジェッツ時代の実績を次のように報じています。

  • 2022-23シーズン: B1最長となる24連勝を記録
  • 同シーズン: B1レギュラーシーズン歴代最高勝率.883(53勝7敗)
  • 2023-24シーズン: 東アジアスーパーリーグと天皇杯を制し2冠

同記事はまた、パトリック氏に近畿大学への留学経験があること、ドイツのトップリーグで最優秀ヘッドコーチ賞に輝いた経歴があることも伝えています。

60試合で7敗という数字の意味

勝率.883は、単発の好調では届きません。B1のレギュラーシーズンは同一カードを土日に連戦する形式が基本で、相手に修正の機会を与えながら60試合を戦い抜きます。その中で7敗——つまり、連戦の2日目に足元をすくわれる回数まで抑え込んだということです。

24連勝という記録も同じ性質を持っています。ローテーションの疲労、故障、対戦相手のスカウティングという変数を抱えながら、チームとしての出力が落ちなかった。日々の練習の基準を落とさないタイプの指揮官であることが、この2つの数字から読み取れます。

もっとも、千葉ジェッツと現在のベルテックス静岡では、予算規模も選手層も置かれた状況も異なります。同じ数字がそのまま再現されると考えるのは早計でしょう。重要なのは、彼が何を積み上げて数字にたどり着いたのかという中身のほうです。

掲げているのは「速さ」だが、土台は日常の反復

パトリックHC自身の言葉は、そのヒントになります。

月刊バスケットボールWEBは2026年7月22日、パトリックHCのコメントを掲載しました。同記事によれば、パトリックHCは「ファストペースのバスケットをして、静岡の皆さんが応援したくなるようなチームを作りたい」と語っています。

一方で、同記事で強調されているのは派手な戦術ではなく、地味な反復です。

「ベーシックなプロセスを大事にしていきたいです。バスケにおいて大事なポイントは毎日同じ熱量、同じスタンダードで練習すること」

(月刊バスケットボールWEB/2026年7月22日)

ファストペースとは何を指すのか

バスケットボールでいうペースとは、1試合あたりに何回攻撃の機会(ポゼッション)を作るかの目安です。ペースを上げるチームは、相手の得点後に素早く運ぶ、リバウンドを奪ってすぐ走る、ディフェンスでボールを奪って速攻に出る、といった形で攻撃回数そのものを増やします。

攻撃回数が増えれば得点も増えますが、同時に相手の攻撃回数も増えます。だからこそ、速いバスケットを成立させる条件は攻撃側ではなく守備側にあります。

  • ディフェンスリバウンドを確保できないと、走り出す起点が作れない
  • ターンオーバー(ミスによる攻撃権の喪失)が増えれば、そのまま相手の速攻になる
  • 3ポイントシュートの試投数は増えやすいが、確率が伴わなければ長いリバウンドから逆速攻を受ける

B.LEAGUE公式サイトの記事によれば、GMの井上雅史氏はヘッドコーチ選考にあたって、アグレッシブなディフェンスをベースにした速いバスケットを実装できることを条件のひとつに挙げていました。クラブが求めた像と、パトリックHCが口にしている方向性は重なっています。

カルチャーは「コーチから生まれるものではない」

もうひとつ、月刊バスケットボールWEBの記事で目を引くのは、チームカルチャーについての発言です。パトリックHCは、チームカルチャーはコーチから生まれるのではなく、選手たちに「ファーストフォロワー」になってほしいという趣旨を語っています。

指揮官が号令をかけて文化ができるのではなく、最初に本気で乗った選手が周囲を動かす——という考え方です。ここが機能するかどうかは、ロスターの中で誰が最初に動くかにかかります。

B2西地区最下位からの再出発という現実

事実として押さえておきたいのは、この就任がタイトル争いの続きではなく、立て直しの局面で起きているという点です。

2026-27シーズンから、Bリーグは3つのカテゴリーに再編されました。B.LEAGUE公式サイトは、Bワン(B.ONE)に25クラブが参入することを発表しています。B.LEAGUE公式のクラブページによれば、ベルテックス静岡はB.ONE西地区に所属しています。

前年度の立ち位置については、バスケットボールキングが2026年9月21日のB.ONE開幕節プレビュー記事で、静岡が前シーズンのB2西地区最下位だったと伝えています。B1歴代最高勝率を持つ指揮官と、カテゴリー最下位からの再出発。この落差が、今季の静岡を見るうえでの緊張点です。

ロスターは12人、軸はベテランPG

ベルテックス静岡の公式サイトの選手一覧では、2026年9月26日時点で12名が登録されています。背番号0のポイントガード・橋本竜馬選手がその一人です。前出のバスケットボールキングのプレビュー記事は、橋本選手をチームの中心的存在として挙げています。

12人というロスターサイズは、走るバスケットボールを標榜するチームにとって余裕のある数字ではありません。

  • 出場時間を分散させたいペース設計に対して、交代の選択肢が限られる
  • 連戦のGAME2で疲労が出たとき、ローテーションの幅がそのまま結果に響きやすい
  • 負傷離脱が1人出ただけで、想定していた組み合わせが崩れる

もっとも、選手層の薄さを速さで補うという考え方も成立します。相手が守備を整える前に攻め切れば、消耗の総量はむしろ抑えられる場合があるからです。パトリックHCがどちらの解を採るのかは、実際の試合での交代の切り方に表れてくると考えられます。

開幕節で見るべきこと、そしてまだ確定していないこと

パトリックHCが静岡に持ち込もうとしているものは、「ファストペース」という看板よりも、その手前にある日常の基準です。毎日同じ熱量で練習し、選手が自分たちで文化を回す。千葉ジェッツで60試合中53勝という数字に到達した過程と、静岡で語っている言葉は、同じところを向いています。

ベルテックス静岡の公式サイトによれば、クラブは2026年2月17日、2026-27シーズンの日程を発表しました。第1節はファイティングイーグルス名古屋との2連戦で、9月26日(土)・27日(日)の両日、このはなアリーナで開催されます。B.LEAGUE公式のクラブページでも、両日14時05分開始と確認できます。

今後の注目点

  • GAME1とGAME2の差: 連戦の2日目にペースを維持できるか。千葉時代の勝率を支えたのは、まさにこの2日目の強さでした
  • ターンオーバーとディフェンスリバウンド: 走る前提が整っているかは、この2項目に出ます
  • 交代の切り方: 12人のロスターで、どこまで出場時間を分散させるか
  • 誰が「ファーストフォロワー」になるか: ベンチの反応や声の出どころは、スタッツに出ない指標です

現時点で確認できていない論点

  • ヘッドコーチ契約の年数や期間の区切りは、2026年9月26日時点で公式発表を確認できていません
  • 2026年9月26日のGAME1の結果は、本稿の確認時点では公式記録を確認できていません

数字と肩書きだけを見れば、この就任は静岡にとって大きな出来事です。ただし、パトリックHC自身が語っているのは記録ではなく、練習の熱量という毎日の話でした。開幕節の2日間で、その言葉がコートの上でどう形になるのか——見るべきはそこです。

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